正直に言うと、最初のきっかけはただの「意地」だった。
うちの会社、有限会社ジェイ・スピリッツは、スクレイピングだの機械学習だのAIだのを20年以上飯のタネにしてきた。ゲームからメインフレーム、プログラムからSE、プロバイダーまで、コンピュータに関わる仕事はかれこれ40年になる。それだけの経験がありながら、肝心の自社サイトはどうだったかというと、独立して会社を起こしてからもう20年経つというのに、WordPressのテーマをほぼデモのまま使い回した、いかにも「とりあえず作りました」的なサイトだった。
技術で食ってる会社だが、HPは「とりあえずこんなことやっています」というレベル。技術もへったくれもない。笑い話にもならない。
とはいえ、忙しいし、とりあえずあればいいやと思いながら、ここまで来てしまった。生成AIでの開発環境へとシフトが進む中、少しAIに手伝ってもらおうかと画策した。
私はコードを書く人間ではない。簡単なHTML・CSS程度の知識はあるが、上流設計やデザインのように頭の中で全体像を組み立てるのは得意でも、下流工程はまるで畑違いだ。まずはAIに技術の蘊蓄を垂れて、こんなHPにしたいと言ってみた。気軽な気持ちで、WordPressで作ったチープな内容を少し書き換える程度の提案のつもりだった。
ところがAIに言われたのは、「まず現在のページを見せてください」という一言だった。見せてみると、軽く、しかし丁寧にディスられた。能書きに見合わないチープなサイトだと。カチンときた。
だったらと開き直った。下流工程のエンジニアも忙しいので、私とAIとで、最新の技術を使い、蘊蓄に見合ったサイトを作ろうじゃないか。このサイト自体を今後の会社の方向性にもするし、AIとの関わり方の実証実験にもしてしまおうと決めた。
「よし、AIと組んで自分でフルスクラッチしよう」と思い立ったのが、そもそもの発端である。今思えば、なかなかの無謀な発想である。
CPTって何ですか Claudeとの共同作業が始まってすぐ、私は自分が最新の技術用語にどれだけ疎いかを思い知ることになる。
「CPTで管理しましょう」と言われて、私の頭の中には「?」しか浮かばなかった。恥を忍んで聞いた。「CPTって何ですか」と。もっとも、よく考えればAI相手なら恥ずかしくも何ともないのだが。
Custom Post Type、つまりWordPressの投稿の「型」のことだと分かった時、なんだ、そういうことかと拍子抜けした。だが同時に、これから先この調子で最後まで辿り着けるのだろうかという一抹の不安もよぎった。それでも、若いエンジニアに「それ何ですか」と聞くよりは、はるかに気が楽ではあった。
タグとタイトルとマーカーの違いも、最初はまるで区別がついていなかった。「タグ」と言われれば漠然と分かった気になり、「マーカー」と言われれば別の何かだと勘違いし、結局同じ話を3回くらい説明し直してもらった記憶がある。これは今だから笑って書けるが、当時は結構真剣に混乱していた。
それでも設計だけは譲らなかった コードは書けない。専門用語もあやふや。それでも一つだけ譲らなかったことがある。それは、「イメージできないものは実現できない」というテーゼだ。
サイトの構成、トーン、どこにどんな技術論を置くか、Worksページで何を出して何を隠すか——そういう上流の設計思想だけは、最初から最後まで一貫して自分の頭の中にあった。実装の手段が分からなくても、完成形が見えていれば、あとはAIと一緒に一つずつ埋めていけばいい。そう腹を括った。
結果的にこの判断は間違っていなかったと思う。ただし、その道のりが平坦だったかというと、まったくそんなことはなかった。
次回は、その「平坦ではなかった道のり」について、恥を忍んでいくつか紹介しようと思う。